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霧ヶ丘の家

< WORKS


所在地:神奈川県横浜市
構造・規模:木造 2階建
竣工年月:2017年1月
敷地面積:224.98m 2
建築面積:58.79m 2
延床面積:106.82m 2
設計:若原アトリエ
構造:長坂設計工舎
施工:竹駒工務店
 
写真:中村絵

外に開いた部屋

 
最近、50代の夫婦の住まいを設計する機会が続いている。それぞれの建主が家を建てる理由は、仕事や子育て中心の生活が終わり、新しい生活スタイルを模索する中で自分たちの生活をもう一度見直すということがある。私はそうした住まい手にふたつの提案をするようにしている。ひとつ目はふたりだけの住まいなので、あまり大きな家にしないこと。個室も多くはつくらず、なるべくコンパクトに暮らせる小さな家にすること。ふたつ目は家の一部を外(社会)に開けるようにしておくこと。将来的に部屋の一部を教室やギャラリーとして利用できるようにしておくのである。自宅でできることを始めようと思った時に容易に外に解放できる場があれば、そこをきっかけに新たな交流や関係性が生まれてくる。そうすると住まいが夫婦ふたりの生活の場だけでなく地域にも開かれた豊かな活動の場となっていくからである。
 
 

陰影で領域をつくる

 
横浜市郊外の閑静な住宅地に建つ「霧が丘の家」もそうした提案を理解してもらった50代夫婦の住宅である。建物は間口3間、奥行き5間の建15年。木造2階建て。郊外型としてはやや小さい住宅である。1階は玄関ホールからギャラリー、和室を一直線上に配置。横から差し込む。
光によって深い奥行きを感じることができる。ギャラリーは外部から直接アクセスすることができ、玄関ホールとは引き戸で仕切ることができるようになっている。2階は真ん中に柱のある閉じた一室空間。ここに障子やトップライトからの光が荒く仕上げた漆喰に反射し輪郭の柔らかな陰影となってそれぞれの生活の領域を浮かび上がらせる。大きな面に広がるグラデーションが内部空間に距離感を生み出し、窓の大きさ、位置、窓枠のディテールが場に落ち着きを与えている。
 
 

豊かな日常のために

 
光と影で領域をつくり、緩やかに仕切るという手法の先にあるのは、中に住む人と人との関係性をデザインすることなのではないか。人間の気持ちは常に変化し続けるものである。それを壁で遮断し、安易にオン・オフするのではなく、お互いのほどよい距離感を保ちながら生活できる住まいがいちばんだろう。また家の一部を開き時々外からの刺激が加わることで日常がより豊かになればさらによい。こうした住まいが増えてくれば住宅だけでなく街並みの様子も少しづつ変わってくるのではないかと期待している。
 
(新建築住宅特集2017年7月号)

雑誌/書籍
●『住宅特集』(新建築)2017年7月号《2017》  >>LINK
●『日経アーキテクチュア』2017年9月 14日号(日経BP社)《2017》  >>LINK