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鎌倉の分居

< WORKS


所在地:神奈川県鎌倉市
構造・規模:木造 2階建
竣工年月:2014年7月
敷地面積:238.00m 2
建築面積:53.44m 2
延床面積:79.49m 2
設計:若原アトリエ
構造:長坂設計工舎
植栽:造園よしの
家具:ハオアンドメイ
鎖樋制作:タニタハウジングウェア
施工:木村工業
 
写真:中村絵

柔らかさと静寂さ

 
敷地は鎌倉駅から少し離れた住宅地にある。
都心で暮らす建主家族が利用する「もうひとつの場所」として小さな住まいを計画した。
1区画が約80坪の街区の中で周りと適度に距離をもつように、建物を敷地中央に配置している。平面計画は3尺(910mm)グリッドを基本とし、間口3間半、奥行3間半の正方形平面に、奥行1間の下屋が取り付くヴォリュームとした。屋根形状は8寸勾配の切妻屋根とし、軒先を水平にすることで単純な外観に少しばかり変化を与えている。内部空間は、三和土の玄関を抜けると食堂、居間、アトリエ、寝室と家族がそれぞれ過ごす場所が少しずつ空間のヴォリュームを変えながら200mm単位のレベル差で螺旋状に連続している。開口部は光の分量を考慮しながら位置と大きさを決め、仕上げは床を無垢ナラフローリング、壁と天井は瓦を砕いて混ぜた桜色の漆喰で統一した。低い重心の開口部や陰影がつくり出す居場所といった手法は、「あがり屋敷の家」(本誌0311)や「南沢の小住宅」(同1205)からけているが、今回は構成と素材のあり方から設計を展開できないかと考えた。螺旋状に変化する間仕切りのない空間の構成は、10強の平面に実際の大きさ以上に伸びやかさを与えている。その内部を粗い表情の桜色の漆喰とすることで、全体に人の手の跡を感じる柔らかな印象をもった空間が立ち上がった。それは抽象的な白い空間とは違う、親密な距離感をもった空間となったのではないだろうか。家族揃ってこの住まいを訪れる時、日常からの脱却ではなく、日常の続きにありながらも、心安らげる場所が随所にあり、それぞれが好きな場所でゆったりとした時間を過ごす......そんな様子を想像しながら計画を進めてきた。完成してまだ間もないが、それに相応しい柔らかさと静寂さをもった住まいが完成したのではないかと思っている。
 
(新建築住宅特集2014年10月号)

雑誌/書籍
●『小さな家。時をつむぐ、豊かな暮らし』(エクスナレッジ)《2017》  >>LINK
●『なるほど住宅デザイン』(エクスナレッジ)《2017》  >>LINK
●『最もくわしい屋根・小屋組の図鑑』(エクスナレッジ)《2017》 >>LINK
●『建築知識』2015年11月号(エクスナレッジ)《2015》  >>LINK
●『建築知識』2015年5月号(エクスナレッジ)《2015》  >>LINK
●『OCEANS (オーシャンズ)』 2015年2月号(ライトハウスメディア)《2015》  >>LINK
●『住宅特集』(新建築)2014年10月号《2014》  >>LINK
●『住宅特集』(新建築)2014年4月号《2014》  >>LINK